初めて選ぶドイツワイン

 「はじめてワインを飲む人には、是非ドイツワインを奨めたい。甘くて、軽くて、飲みやすい、ドイツの白こそワイン入門には絶好の一本です」現在では、ドイツ国内でも「食事に合うワインを」という要求が高まって、ワイン総生産のうち40%は赤ワインが占め、甘口であることが特徴のように認識されていた白ワインの70%は辛口か中辛口に仕上げられるといいます。
 辛口から極甘口まで、または爽快な白ワインから力強い赤ワインまで、ドイツワインは素晴らしく広大な間口を私達に開放してくれています。

そもそもドイツワインとは?
 ドイツで葡萄栽培がはじめられたのは二世紀の初頭、古代ローマ人が入植して赤ワイン用葡萄を植付けたのが起源と言われています。この事実を示す遺物としてモーゼル河中流のノイマーゲンからワインを運搬する船の石彫が発掘されています。
 結局、当時の赤ワイン用葡萄は寒冷な気候に合わなかったようですが、15世紀頃白ワイン用葡萄リースリングの優良性が知られ広く植付けられるようになり16世紀のはじめにはラインやモーゼル地域は北ヨーロッパのワイン生産地として質、量ともに黄金期を迎えました。ドイツワインといえば白、という常識が世界的に確立したのもまたこの頃なのです。

ノイマーゲンにあるワイン運搬船の石彫

ドイツワインの現在
 ドイツワインの格付けは、日常消費用のターフェルワイン、QbA、QmP、に大きく分類され、格付けが上がるに従い稀少化していく傾向にあります。QmPの肩書として最高峰をなすアイスヴァインやトロッケンベーレンアウスレーゼに至っては頂点に相応しく限りなく生産量が少なく高価です。
 ドイツワインの格付けの最も特徴的な点は、原料葡萄の糖度によってランクが決定されるということです。例えばフランスでは、特級ワインは指定の特級畑の葡萄からしか造られませんが、ドイツでは果汁の糖度が法定基準を満たし、公式品質管理検査をパスすれば何処の畑の葡萄でも高格付けのワインになり得るのです。
 テロワール(生育環境)にこだわるフランスでは畑の地質を重要視し、北緯50度という寒冷のドイツでは原料葡萄の糖度を上げることがワイン醸造における最大の関心事というわけなのです。
 フランスワインを形式主義が生んだ美禄に喩えるなら、ドイツワインは果実の実力主義の賜物ということができるでしょう。むろん、フランスの醸造家が原料葡萄の品質に無関心なわけではなく、ドイツの醸造家が畑の土壌や環境にこだわらない、という意味ではないです。


リースリングは表皮に浮く黒い斑点が熟したサイン


QbAワイン(上質ワイン)
クウァリテーツワイン・ベシュティムター・アンバウゲビーテ(限定生産地域上質ワイン)の略。
果実味が豊かで、軽く、生産地特有の個性があるもの。少々よそ行きの食事、例えば軽いランチなどに向く。現地では、このクラスの甘目のものをショーレ(炭酸割り)にする光景も見られる。フレッシュな味わいを尊重して新しいうちに飲まれることが多い。

QmPワイン(肩書き付上質ワイン)
クウァリテーツワイン・ミット・プレディカートの略。
生産地、葡萄品種、アルコール含有量、製造法などがQbAワインよりもさらに高度に検査された、ドイツ最高格付けワイン。枠内に6つの等級がある。等級が上がるに従って、エクスレ度(葡萄果汁に含まれる糖分を表示したもの)も、より高くなる。